【本の感想】アガサ・クリスティー 『葬儀を終えて』 加島祥造訳

アガサ・クリスティー 『葬儀を終えて』 加島祥造訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。

原題は『After the Funeral』です。

☆☆☆

マギンティ夫人は死んだ』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの二十五作目です。序盤のインパクトある台詞とゆっくりと広がる疑惑が印象的な話です。

序盤のインパクトある台詞

「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」

この一言が物語を支配し、疑惑が広がっていく過程が面白いです。

なぜならば、この台詞を言った女性(コーラ)は次の日には殺されてしまうからです。

この女性のことは物語で繰り返し語られます。「あの娘はちょっと無邪気」「非常に愚かなばかりでなく、多少精神にアンバランスなところのある女だ。子供のときから言わずもがなの真実をぶちまけてしまう」などです。

つまり、言わなくても良いことをつい言ってしまう残念な人です。ちなみに子供ではありません。年齢は四十九歳です。

しかし、「彼女の無邪気な言葉は、真実でなくとも多少の真実性がある。」ため、遺族たちはみな当惑を感じます。その状態で殺されてしまうのだから、彼女の発言はひょっとしたら本当で、何か隠されたことがあるのではないか?という疑惑に発展していきます。

しかし、亡くなったリチャードの遺産は遺族に公平に分配され、遺族たちにはほぼ不満はありません。遺族の一人が亡くなりさらに分配が増えても、それが気にならない金額を既に公平に相続できるからです。

つまり、遺族には金銭的な動機がありません。しかし、遺族たちは裕福では無く、様々な事情でお金が必要な状態でもあります。

さらに犠牲が

そんな中、さらに事件が発生します。コーラと生活していた女性が毒殺されかけます。そうなると、「やはりコーラは何かを知っているのではないか?その話を知っている可能性から彼女は毒殺されたのではないか?」という疑念が出てきます。

殺されたとは思えないが事実は不明なリチャードと、殺されたことが確実な余計な一言を発したコーラ、そして、コーラと一緒に住んでいて何かを知っているかもしれない毒殺されかけた女性。

疑惑は広がります。それが面白いです。

さいごに

たった一言です。たった一言がこの全体を覆っています。解決の糸口が見えず、疑惑だけが広がり続ける展開が面白いです。

トリックは思わぬところで発覚します。他の作品だと語られることが語らないので、そこがヒントになるかも知れません。

他の作品の関連では『エッジウェア卿の死』のことが語られます。犯人の特徴を語っているので未読の場合は注意が必要です。

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