【本の感想】アガサ・クリスティー 『バートラム・ホテルにて』 乾信一郎訳

アガサ・クリスティー 『バートラム・ホテルにて』 乾信一郎訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。

原題は『At Bertram’s Hotel』です。

☆☆

カリブ海の秘密』に続く、ミス・マープルシリーズの第十作目です。ホテルの雰囲気はいいですが、何の話か全容がよく分からない拍子抜けする話です。

ホテルの雰囲気は最高

舞台となるホテルの雰囲気は最高に良いです。古き良き英国が詰まっています。冒頭に描かれるホテルはまさに古き良き英国そのものです。

午後のお茶や本物のマフィン、調度品に客層、従業員と、できすぎなくらい素晴らしいホテルです。このホテルの描写だけで本書は楽しめると思います。

何の話かよく分からない

ホテルは素晴らしいですが、何か大きな事件に関係しているようなことが描かれます。他にも行方不明になる牧師、とある女性の謎の行動と、三つがバラバラに動き、最後には一つになります。しかし、それまでが長いです。それはそれでどうなるかと楽しめはするのですが、解決は急でとってつけた感があり、なんとも拍子抜けな感じがしています。

バートラム・ホテルの描写と物語が釣り合っていないように思います。ホテルとその思い出の全てが良いわけでは無く、一抹の寂しさを述懐するところなどの老人目線はよいのですが、マープルでなくてもいいような気がします。マープルの方が分かりやすいアイコンなのでしょうが、何かを特別推理して行動するわけではありません。

マープルは買い物や立ち聞き、推理を楽しんでいます。そして調査は警察が行います。警察は調査でマープルの推理と同じ結論に達するので、マープルの必要性がないのです。

さいごに

ホテルの描写は素晴らしいです。実に雰囲気が良いです。様々な目線で物語は進みますが、舞台の素晴らしさに見合っていないだけでなく、解決は突然のため、全容がよく分からず拍子抜けします。

ミステリというよりも古き良き英国を感じさせる上品なホテルの描写や、ほほえましい老人の行動を楽しむ話だと思います。

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