【本の感想】アガサ・クリスティー 『死者のあやまち』 田村隆一訳

アガサ・クリスティー 『死者のあやまち』 田村隆一訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。

原題は『Dead Man’s Folly』です。

☆☆☆

ヒッコリー・ロードの殺人』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの二十七作目です。哀愁と寂寥感のある最後のシーンが印象的です。

ラストシーン

最後の哀愁と寂寥感のあるシーンが印象的です。真相をポアロが語り、相手が決断をします。そこには寂しさと虚しさと疲れと、そして何よりも決意が描かれています。その結果は分からないまま物語はフェードアウトするように終わっていきます。

そこから伝わってくる哀愁と寂寥感が良いです。相手の作中の言動や、それを見ている周りの声などを思い返すと、あの時のあの人の心境を考えるとたまらなくなります。すぐに読み返したくなりました。

ポアロとオリヴァ夫人

作中のポアロはどうかというと、普段よりも切れが悪いように感じました。もちろん、あるヒントから解決に結びつけてはいくのですが、そこにポアロの鋭さを楽しむところはないように思います。

それよりも思わぬ活躍をするのはオリヴァ夫人です。

ひらいたトランプ』、『マギンティ夫人は死んだ』など、たびたび登場する彼女はいつも周りを振り回します。今回は警察も彼女の泉のように湧き続ける想像に半ばあきれてしまいます。

しかし、その想像には何かきっかけがあるのではないか?と考え、そのように誘導していくポアロの凄さもあるのですが、今までのように物語をかき回すだけでなく、ヘイスティングズの閃きのようにオリヴァ夫人の想像が解決への糸口になっているところに面白さを感じました。

さいごに

結末を知ってから全てを知る人の内面を思って悶え、再読をしてしまう。

そこが最大の面白さだと思います。一方で、動機も含め犯人を特定するのはかなり無理筋な気がしてなりません。オリヴァ夫人よろしく想像をたくましくして予想するか、クリスティ作品の傾向からメタ的に考えて犯人を特定していくしかないように思えます。

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