【本の感想】アガサ・クリスティー 『象は忘れない』 中村能三訳

アガサ・クリスティー 『象は忘れない』 中村能三訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。

原題は『Elephant Can Remember』です。

☆☆☆

ハロウィーン・パーティ』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの三十二作目です。老人たちの証言から過去の真相に迫る物語です。

謎めいた感じの本の題名が良い

ちょっと謎めいた感じのする『象は忘れない』という言葉が印象的です。作中でもちょっとしたジョークに使われたり使われたりします。ラストにも関係するこのフレーズはちょっと不思議で謎めいているのがいい感じです。

作中は象は忘れないという逸話から、老人たちに昔の話を聞いて真相に迫っていきます。老人たちの話ばかりなのでちょっと冗長な感じもしますが、いかにも老人の話といった具合なので、それほど飽きずに読み進めることができます。

過去作との関係

作中に語られる思い出話は累計の事件の話にもなります。そのためか、『五匹の子豚』や『ハロウィーン・パーティ』、『マギンティ夫人は死んだ』などが当たり前のように語られます。

そこにはネタバレがあるため、それらの作品が未読だと楽しみが損なわれます。

さいごに

ミステリとして分かりやすいヒントやアイテムが登場するため、誰が誰を殺したかというのは簡単に分かります。動機もです。

しかしそれでつまらないかというとそうではなく、真相の哀しさと優しさ、老人たちの思い出話からも伝わるしみじみ感。過去は過去として受け止めて未来に向かい姿勢。そしてなによりもオリヴァ夫人の最後の台詞が良い読後感を引き出しているように思います。以下引用します。

「象は忘れない」とミセス・オリヴァは言った。「でもわたしたちは人間ですからね、ありがたいことに、人間は忘れることができるんですよ」

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