【本の感想】アガサ・クリスティー 『ポアロのクリスマス』 村上啓夫訳

アガサ・クリスティー 『ポアロのクリスマス』 村上啓夫訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2011年発行を読みました。

原題は『Hercule Poirot’s Christmas』です。

☆☆

死との約束』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの十七作目です。大げさなだけの物語です。

大げさな話

冒頭にクリスティから義兄へのメッセージがあります。「もっと血にまみれた、思い切り兇暴な殺人」を求められて、この物語を書いたとのこと。そのほかに、殺人現場で関係者は以下のように呟きます。

「あの年寄りが、あんなにたくさんの血をもっていたと、誰が考えただろう?」
「神のひき臼はまわるのがのろいが、どんな小さな粒もひきのがさない」

事件の直前には関係者の一人が葬送行進曲を弾きます。

思わせぶりなことばかりですがそれだけです。それで何か事件が大きく転換するものではありません。ただただ、演出の一部になっているだけで、肩透かし感がすごいです。

被害者と家族

遺産を力の源泉として、相続の可能性のある人たちにたちの悪いいたずらをするとろくな事になりません。クリスマスにあえて家族を集めて、家族間不和を起こさせ、それを楽しんでいるが被害者です。

同情の余地はありません。派手に殺されていますが、特に感じるところはありません。

被疑者となる家族には強さがありません。好敵手にはなりません。本当のことは言いませんが、すぐにぼろは出てきます。ポアロの分析を待つまでも無く、やれるか?を考えると、そうでない人たちばかりです。

そのため、全く分からない感じになります。そういうパズルを解くところが面白いのかも知れません。しかし、大げさかつ思わせぶりなこととのギャップのせいか、盛り上がりに欠けます。唯一の面白いところはポアロが犯人を特定するところです。前半のあのやりとりがあるためか、驚きがありました。

他の物語との関係

三幕の殺人』のネタバレがあります。犯人と犯罪手法がばらされています。

有名な探偵であるポアロですから過去の話で花を咲かせるのもいいですが、匂わせるどころかストレートに犯人名を出しているのが驚きでした。

さいごに

大げさで思わせぶりなところから期待は高まりますが、高まるだけで唐突に犯人を特定して終わってしまいます。

色々とわざとらしくやってる感じがする物語でした。これを読んで、

「さすが、クリスティ。このわざとらしさをクリスティは楽しんで書いたのかな」

と、思うくらいの余裕が無いと、ちょっとびっくりさせられただけで、何の印象も残らない話だと思います。

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