【本の感想】アガサ・クリスティー 『ヒッコリー・ロードの殺人』 高橋豊訳

アガサ・クリスティー 『ヒッコリー・ロードの殺人』 高橋豊訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。

原題は『Hickory Dickory Dock』です。

☆☆

葬儀を終えて』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの二十六作目です。正しい順序と方法で物事を解きほぐし、学生との違いを感じさせるポアロが印象的です。

正しい順序と方法

ポアロといえば正しい順序と方法です。過去作でもポアロの特長として何度も出てきます。ちょっとずれた物を元の位置に戻したり、きっちりしていない事を気にしたりしているポアロを何度も見てきました。物語の冒頭でも中盤でも終盤でも「正しい順序と方法」をポアロが語ります。これが解決のヒントになっています。

今回は学生寮の盗難事件です。最初、並べられた盗難品はてんでばらばらで一貫性がありません。ちょっと難しいパズルに取りかかるように喜ぶところや、そのパズルを解きほぐしていく様がなんともポアロらしいです。

学生と犯人

様々な学生たちが登場します。学生たちのポアロに対する印象は『マギンティ夫人は死んだ』を解決した探偵です。事件に対する反応は薄く、たいしたことないだろうと思われています。

しかし、学生側とポアロ側を比べると完全に大人と子供です。ポアロと警察相手には荷が重い学生ばかりです。それなのに若さなのか、学生だからなのか、なんとも青臭い態度をとる者が多いです。

その中で、過去作および作中でポアロの言う「犯人の特徴」が出てきます。そしてそれがそのまま犯人になってしまいます。分かりやすいとも言えますし、ひねりが無いとも言えます。

犯人に意外性は無く、動機は自分勝手です。増長した子供の器量です。ポアロが犯人の動機を明らかにする前に犯人の特定して語るところがあるのですが、ほんとうにそのままです。

落ち着くところに落ち着くわけですが、それが面白いかというとそういうわけではありません。

さいごに

ポアロは最初の死体が自殺では無く他殺だと分かったときは実に冷めています。一番テンションが上がったところが一貫性のない盗難品リストです。なぜかというと、今回の事件が退屈しのぎだからです。

ポアロが今回の事件に関わる理由は以下の通りです。

もし彼がこの事件に介入するとしたら、理由はそれしかあるまいと、心の中で言った。彼は最近かなり退屈していて、この事件がささいな問題であるからこそ彼の関心をひいたのだということを、認めようとはしなかった。

退屈しのぎらしく、ささいな問題らしく、たいした意外性も無く物語は終わります。そのため、特に印象に残らない物語になっています。面白くもなく、つまらなくもありません。

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