アガサ・クリスティー 『マギンティ夫人は死んだ』 田村隆一訳、早川書房(クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。
原題は『Mrs Mcginty’s Dead』です。
☆
『満潮に乗って』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの二十四作目です。全体ごちゃごちゃして整理されておらず分かりにくい話です。
設定は面白そう
この事件はスペンス警視がポアロに相談をすることで始まります。スペンス警視が捕まえたのですが、捕まえたスペンス警視本人は無罪だと思っているが証明ができません。だからポアロに依頼をしてきます。
つまり、警察側が無理だと思っていることをポアロが解明する話です。きっとポアロが活躍して面白いことになると思ったのですが、面白いのはこの設定だけでした。
途中までは面白い
ポアロが捜査をすることで、警察の発見できなかったインクや新聞の切り抜きを発見できます。そこから推理は発展するのですが、面白いのはここまででした。
残念なポアロのあつかい
スペンス警視に相談を受け、かっこよく依頼を受けたのはいいですが、その後のポアロは残念です。灰色の脳細胞のキレが悪いとかではなく、あつかわれ方が残念で、著者の悪意があるようにも思えます。
冒頭で豪華な食事を食べて、食べることに喜びを感じているのにかかわらず、現場の宿屋ではまずい飯がでてきます。ポアロは整理好きですが、宿屋は整理がまったくされていません。罪を問われている青年は無気力な後ろ向きなため、助けがいがありません。
ポアロ自身もうんざりしながら事件解決に動きます。そして登場人物にオリヴァ夫人が出てきます。
オリヴァ夫人
『ひらいたトランプ』以来の登場で、『ひらいたトランプ』のことも話題になります。一種のファンサービスのような存在です。
しかし、オリヴァ夫人の自作に対する毒舌はクリスティがポアロシリーズに言っているようにも聞こえるように感じます。メタ的に愚痴を聞かされても楽しくありません。
本作でのポアロの扱い含めて、ポアロシリーズが嫌だったのだろうと思えます。
全体のごちゃごちゃ感
ポアロ調査時のイギリスの田舎の人間関係と人間模様、さらに新聞の切り抜きから浮かぶそれぞれの過去、この二つが組み合わさるため、頭の整理が大変です。
実にごちゃごちゃしています。分かりにくさが物語をさらにつまらなくさせます。
さいごに
この物語は、ポアロが乗せられながらも義侠心で無実の人を救うために、メシマズで美意識の反するイギリスの田舎の宿屋を拠点に苦労する話です。
ポアロがうんざりしてやりきれないと思いながらも事件を解決するというポアロが苦労する話を読みたい人向けなのでしょう。
私はそこに面白さを感じなかったです。
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