アガサ・クリスティー 『メソポタミヤの殺人』 石田善彦訳、早川書房(クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。
原題は『Murder in Mesopotamia』です。
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『ABC殺人事件』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの十二作目です。メソポタミヤを舞台にポアロが活躍します。説明はされますが証拠は無く、それでも事件は解決するつまらない話です。
それでも事件は解決する
終盤にポアロは関係者を集めて以下のように語ります。
「(中略)こうして、すべては説明され、心理的にもすべて論理的に謎が解き明かされました。
だが、証拠はありません……なにもないのです……」
そして犯人は応えます。
「そうだ」彼はいった。「証拠は無い。だが、そんなことは問題ではない。わたしは真実を否定するつもりはない……わたしは(以下略)」
なんとも締まらない話です。たしかにそれで事件は解決しますが、それでいいのかというと全く満足できません。その後、犯人の語る動機にしても心に響くようなものでは無く空虚です。
得体の知れない緊張感
物語の初期の方から「得体の知れない緊張感」というが語られます。遺跡調査隊という閉じた世界で人間関係に緊張があるということです。そんな中、殺人が起きます。
人間関係から探り、誰が犯人かを探るポアロの手法はいつも通りです。特段、面白いところはありません。むしろ、冗長な感じがして退屈です。
さいごに
話は冗長で、事件は解決しているがすっきりとしません。何が面白いかさっぱりです。犯人と同じく疲れてしまったのでは無いかと思うほどです。
『オリエント急行の殺人』との関連が書かれています。これで今回の事件は、『オリエント急行の殺人』前の事件というのは分かりますが、直前の状況がそれとは異なっています。ポアロの活躍により軍の警戒態勢が解かれたのではなかったのでしょうか。
腑に落ちない結末の物語の場合、こういうところも気になって、なんとも雑な感じがしました。
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