【本の感想】アガサ・クリスティー 『復讐の女神』 乾信一郎訳

アガサ・クリスティー 『復讐の女神』 乾信一郎訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。

原題は『Nemesis』です。

☆☆☆☆

バートラム・ホテルにて』に続く、ミス・マープルシリーズの第十一作目です。RPGのように話が進む設定に、今まで以上にマープルの思考が描かれる様に、諧謔があります。『カリブ海の秘密』が既読ならばより楽しめます。

まるでRPGゲームのような展開

今回、マープルに依頼を出したのは『カリブ海の秘密』で親交のあったラフィール氏です。氏はすでに亡くなっているため本人からの依頼ではありません。

面白いのがこの依頼です。依頼内容がはっきりとしていません。依頼を受け、旅行に出るマープルですが、そこで待ち受けるのはラフィール氏と関係のあった人たちです。

ラフィール氏からの報酬のある大きなミッションに、氏が用意したミッション内のクエストがあるような作りがゲームのようで面白かったです。

もちろん最後はミッションコンプリート。多額の報酬をゲットします。

詳細なマープルの思考と行動

今までのシリーズではマープルが序盤から大立ち回りをすることはなかったです。しかし、今回は違います。不明確な依頼の目的や、旅行で出会った人は敵なのか味方かを考えたり、出来事などに対応していきます。

これらに対するマープルの観察眼や推理力、行動力など、そして依頼に対して困惑する様などをたっぷりと楽しめます。

終盤の犯人と対峙する少し前からは犯人を煽ったり、対峙のシーンでは舞台のような姿と台詞を言ったりと、エンターテインメント感もあって面白いです。

ラフィール氏のこと

それでも本作で目立つのは故ラフィール氏です。最初はどう思ったかは分かりませんが、マープルに依頼を出すと決めてからは、本来の目的を横に置いて、かなりノリノリでこのシナリオを作ったのだろうと思えます。

氏は『カリブ海の秘密』で登場しています。『カリブ海の秘密』での氏での描写を読めば、今回のシナリオがいかにも彼らしいと思えてしまいます。

ある意味でマープルよりも目立っています。

さいごに

設定、今まで以上にマープルの思考を知れること、最後の老人たちに対する評価などが面白いところです。

それにしても、こういう舞台設定をしたらマープルは過去の事件を解決するだろうと考えたラフィール氏の方が印象的でした。

もちろん考えたのは著者であるアガサ・クリスティなんですけどね。

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