アガサ・クリスティー 『ビッグ4』 中村妙子訳、早川書房(クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。
原題は『The Big Four』です。
☆☆☆
『アクロイド殺し』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの四作目です。国際犯罪組織vsポアロという、今までとはずいぶん変わった話です。まるで二次創作のような、スリルとサスペンスが面白いです。
いつの事件なのか
『アクロイド殺し』はポアロが引退した後の話です。この『ビッグ4』はまだ現役のため、その前の話であることが分かります。冒頭ヘイスティングズがアルゼンチンから帰ってくる話があるため、『ゴルフ場殺人事件』の後であることが分かります。
さらに「日本をおそった大地震後」という話もあり、本作のおおよその時期が分かるというのが興味深いです。
ちなみに最後にポアロは「カボチャ作りにでも励みましょう!」と言っています。話のつながりからすると次は『アクロイド殺し』なんでしょうね。
そういうつながりや世界が見えてくるのが面白いです。
大きな風呂敷
国際犯罪組織が相手なせいか、風呂敷は大きいです。イギリスの秘密情報部員が殺され、謎の強力な電波機器に触れる話があり、フランス首相やイギリスの内務大臣が登場し、海軍省の駆逐艦も登場します。
まるでスパイ小説です。その展開、次々登場する人物や出来事に風呂敷の大きさを感じずにいられませんし、ミステリ感はあまりないため、スパイ小説風二次創作のような趣があります。
もちろん、最後は敵の秘密基地へ突入します。イタリア、フランス、イギリスの政府との協調体勢ができているほどです。
雑な作り
本作の最低さ故か、電子書籍版には通常ない訳者あとがきがあります。本作は不調だった時の書かれたものと言い訳がましく書かれているほどです。
確かに、なんでも出来るナンバー・フォーにはあきれます。ミステリを期待するととんだ肩透かしをくらいます。『アガサ・クリスティー完全攻略(決定版)』でも「薄っぺらいのだ。雑なのだ。」とクソミソで、評価の☆も最低です。
とはいえ、「ポアロがスパイ小説風に活躍したら?」と仮定した二次創作、勢いだけのB級作品だと思えばそれなりに楽しいです。
さいごに
今までを思うとただただ驚きばかりです。マンネリを避けるスパイスとしては、刺激が強すぎです。
そのため、本編よりも本作がシリーズのいつの時期なのかとか、ジロー警部やヘイスティングズのいじりや評価など、そういうところが面白かったりします。
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