【本の感想】アガサ・クリスティー 『複数の時計』 橋本福夫訳

アガサ・クリスティー 『複数の時計』 橋本福夫訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。

原題は『The Clocks』です。

鳩のなかの猫』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの二十九作目です。思わせぶりなだけでつまらない物語です。

思わせぶりな謎

思わせぶりな謎がいくつも提示された後にその謎を解明するために調査をしていくのですが、面白いのはその謎が示されるところまでです。

秘密情報部員と警察の視点から調査は進んでいきますが、繰り返される聞き取りと現場確認はその謎に近づくことはなかなかできません。そのため期待値は上がらず、ただただ冗長なゆっくりとした展開を読むことになります。

これが実に盛り上がりに欠けていて退屈です。

ポアロの活躍

ポアロもそれほど活躍しません。『鳩のなかの猫』同様、大して紙面には出てきませんし、安楽椅子探偵を決め込んでアドバイスをするのみです。

そのアドバイスも近隣住民の話をもっと聞くようなど、差し障りの無いものです。若い秘密情報部員との格の違いなのかもしれませんが、その対比に楽しさがあるわけではありません。

もちろん、最終的にはポアロが解説をしてくれるのですが、それまでの過程が退屈なためか、何か驚かされることも無く、冗長な話が終わった程度の感じでした。

さいごに

冗長な話の先にあるのはとってつけたような感のある終わりです。ポアロものである必要性も感じませんし、刺激は最初の殺人現場だけです。

東西冷戦のスパイものであり、思想と家族の選択などが語られる話でもありますが、それらは単なるフレーバーにしかなっていないように思います。それもまたつまらなさを感じさせる原因なのかもしれません。

意味深なものが無意味に過ぎないと明かされてしまっては完全に興ざめです。

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