【本の感想】アガサ・クリスティー 『ホロー荘の殺人』 中村能三訳

アガサ・クリスティー 『ホロー荘の殺人』 中村能三訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。

原題は『The Hollow』です。

五匹の子豚』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの二十二作目です。ポアロの影が薄い、男女の愛憎劇です。

ポアロの影が薄い話

話の中心となるのは男女の関係です。生き生きとしているが殺された男、妄信的な妻、男を愛する女性たち、男を愛する女性を愛する別の男性、さらにその男性を愛する別の女性、愚かな女性、賢い女性などなどです。

描写のほとんどは彼らことばかりです。同情し包み込むと言えば聞こえがいいですが、家から犯罪を遠ざけてばかりです。ここにポアロの出番はほぼありません。単に昼食に招かれた客という程度です。

ポアロは「この事件で納得のいくことなんかありませんよ」と吐き出すように言う始末です。ポアロ自身も過剰に反応をしていて、犯罪現場に立ち会ったことについてポアロを出しぬくために計画され演出された殺人現場、プールのそばの作られた芝居の舞台ではないかと思っている始末です。

ポアロはまったく活躍しないわけではないですが、影は薄く精彩に欠き、ポアロである必要がないように思えます。つまり、面白くありません。

男女の愛憎劇

何が面白いか分かりません。被害者に魅力を感じません。被害者周辺の人物もです。家族の様々な人の様々な考えと行動の端々に愛があったり、不気味だったり、表面では見えない思わぬ一面があったりはします。

それが事件を攪乱させますし、何よりもその描写が多いため、事件もポアロも置いてけぼりです。

未来に生きるか、過去に生きるかであったり、業を感じるところもあるのですが、別にどうと言うことはありません。

さいごに

単純な犯罪を家族を護る女性たち、これは愛なのですが、それが事件を複雑化させています。そういうのが楽しいのであればいいと思います。

シンプルでは無く、蛇足が沢山あって、しかもそれらが琴線に触れなかったので、実につまらない話でした。

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