アガサ・クリスティー 『ゴルフ場殺人事件』 田村義進訳、早川書房(クリスティー文庫電子書籍版)、2011年発行を読みました。
原題は『The Murder on the Links』です。
☆☆☆
『スタイルズ荘の怪事件』に続く、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの二作目です。ポアロと対照的なジロー刑事の存在が話を面白くしています。
ジローとポアロ
出会ったところから伝わってくるお互いがお互いを嫌っていそうな感じが面白いです。
ポアロは「灰色の脳細胞」を駆使します。自身でも調査をしますが、誰かに任せることが多いです。一方のジローは地道な捜査の繰り返しです。対照的な二人です。
大人の対応をして受け流しつつ、嫌みな対応も忘れない意地悪なポアロを見ることが出来ます。ジロー刑事のプライドの高そうな言動もあって、ポアロに嫌な感じはしません。
ジロー刑事を嗅ぎ回る猟犬、犬扱いをしています。これは最後のオチにも関係していていい案配になっています。
ヘイスティングズ
愛すべき愚か者だが時に鋭いヘイスティングズは今作でもやらかします。美人だからといって殺人現場に案内して、凶器を盗まれてしまいます。フランスだからなのか「美人だから仕方ない」で済んでしまうなんともおおらかなやりとりがあります。
『スタイルズ荘の怪事件』でもいきなり結婚を申し込むなど、よく分からないながらも美女には弱いということは分かる人物です。とはいえ、いくらなんでもやらかしが過ぎます。
ポアロにいいようにあしらわれますし、推理もストレートかつ決めつけが過ぎるところがある正直で単純なキャラクターのためなんとも憎めません。その残念な姿に苦笑いしてしまいます。
ポアロとの会話ではちょっと意地悪なポアロの毒っ気のある掛け合いも大人と子どものようであり、微笑ましいです。
さいごに
『スタイルズ荘の怪事件』 と比べるとエンタメ感があり読みやすいです。
分かりやすいキャラクターの対比があり、ポアロの受け流したり、次に促したり、必要外のことは口にしない大人の対応もあり、読んでいて飽きもせず楽しかったです。
私の知っているポアロを見たような気がします。
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