【本の感想】アガサ・クリスティー 『魔術の殺人』 田村隆一訳

アガサ・クリスティー 『魔術の殺人』 田村隆一訳、早川書房クリスティー文庫電子書籍版)、2012年発行を読みました。

原題は『They Do It with Mirrors』です。

☆☆

予告殺人』に続く、ミス・マープルシリーズの第五作目です。旧友とのやりとりと愛され系おばあさんキャリィが魅力的です。

旧友とのやりとり

忘れがちになりますが、老婦人にだって学生時代があります。その時の旧友から依頼され、旧友の邸宅へマープルは赴きます。そのやりとりが面白いです。

個性的なところは、マープルの旧友らしい感じがします。この三人の学生時代は楽しかったのだろうと想像できてしまいます。

老婦人を侮るな

マープルが邸宅についてから事件は始まります。その舞台には旧友の親族が多数いてややこしく、未成年犯罪者の更生施設が運営されており、そこに集まる人たちはどこかうさんくさく、ちょっと変わった感じに描かれています。

そんな中、みんなに愛されている旧友のキャリィの発言は、耄碌したおばあさんのように、世間知らずの少女のようにとらえられ無視されるのですが、実はこれが真相を突いています。

このことがオチで語られているため、老人だからと馬鹿にはできず、さすが年の功と妙に感心してしまうところに面白さがあると思います。

魔術のたぐい、奇術のたぐい

とはいえ、殺人とそれをとりまく状況はそう面白いわけではありません。複雑な親族の人間関係や、思わせぶりな施設の存在、偏見などの煙幕が濃すぎるように思えます。

ごちゃごちゃしているとも言えますし、タイトルのように魔術のたぐいのようだと言えますし、舞台で奇術を見ているようにも思えます。

術のタネが分かってしまうと、その煙幕の濃さもあって滑っている感があります。それも「術」のたぐいだからだと思います。

さいごに

面白さはあくまでも老婦人たちのやりとりです。マープルと旧友たちのやりとりから分かる仲の良さもですが、なんといってもキャリィの存在が印象的でした。

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