【本の感想】アーサー・C・クラーク 『幼年期の終わり』 池田真紀子訳

アーサー・C・クラーク 『幼年期の終わり』 池田真紀子訳、光文社光文社古典新訳文庫電子版)、2007年発行を読みました。

原題は『Childhood’s End』です。

☆☆☆☆

人の知的好奇心の素晴らしさを感じます。

エンディングには驚かされ、二つの選択肢について考えさせられます。

知恵比べとわくわく感

宇宙から来た異星人は、オーバーテクノロジーを持ち、人類はかないません。それでいて武力による制圧はされず、緩やかな支配です。その支配を受け入れることで人類は黄金期を迎え、幼年期は終わります。

第一章は、圧倒的な科学力と武力を持つが平和主義的な異星人とどう人類は立ち向かっていくかという話です。ちょっとしたミステリーという趣です。

第二章はまさに黄金期です。人の知的好奇心の素晴らしさを感じます。知識も技術もかなわないが、敵対する理由も無いわけですが、それでも知的好奇心のままに行動をする人物は見ていて大変好ましいです。

三章も同様です。ただ消費するのではなく、知的好奇心を刺激して何かをするというのは、人類の優れた特性なんだと思います。

得られるもの、失うもの

第三章は壮大で悲しい別れの物語です。なぜ、異星人は人類との平和的に接していたか。真の目的は何なのかがついに明らかになります。そこにあるのは成長と別れです。そして驚きです。

得たものと失ったものの違いが交じってなんともいえない気持ちになりました。そして本の題名を見返すと、またその気持ちが深くなります。

たしかに「幼年期の終わり」です。人類は黄金期を経て幼年期の終わりをむかえ、新たな領域に踏み込みます。それが幸せかどうか、それを看取っている異星人と、踏み込めない人類の気持ちなどが混じり合い、寂寥感が深くなります。

それでいて諦めない姿勢も示されています。そのため、ただただ寂寥感が深くなるというだけではない、よい読後感が得られます。

さいごに

真の主人公は人類では無かったというが驚きです。最初は何を言っているか分からない、他人事のように聞こえる台詞も、再読すると意味が分かります。

また、喪失の描写が非常に良いです。私は愛情を注いだ子どもとの別れを経験したことがないので分かりませんが、最後の子ども部屋や、子どもと別れるシーンでの犬の描写にはぐっときます。

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