カレー沢薫『負ける技術』 講談社(講談社文庫電子版)、2015年発行を読みました。
非モテ、非リア、ブス、オタクなどを後ろ向きなことを前向きに笑いに変えている自虐コラム集です。
☆☆☆
イタイを通り越し、時には突き抜ける笑いがあります。
時に箴言めいた言葉が出てきて驚くことがあります。
学生時代から著者と逆の立場の人だと何が面白いか分かりません。
面白い言葉たち
『#23 負ける技術』
タイトルについてこのように書いています。この勢いと言葉のセンスがたまりません。
一日の終わりには、いやー今日も負けた負けた! で缶ビールをプシュッ! 手首をスパア! というわけである。 価値を諦めるとこんなに爽快な日々を送れるのだ。
『#41 各国にとっての処女性』
ハーレクイン小説に出てくるイケメンの話です。
ハーレクインに出てくる男は、こんなマヌケなシチュエーションにも屈しないほどイケメンなのであり、ズボンの裾からクソがボロボロ落ちてきてもイケメンなのである。
ただしイケメンに限るという言葉がありますが、ここまでの言葉は見たことがありません。
『#63 人生でどうしてもやりたいふたつのこと』
自身とブスについてこのように書いています。
もし私が美少女であれば「可愛いドジッ子」としての価値があるが、残念ながら現実は「食えない豚」クラスである。
「可愛いドジッ子」の対比が「食えない豚」です。
『#90 女とは』
文字通り、女について書かれています。
女というのは1ミリも可愛いと思っていない女のイメチェンに対しても、まるでチワワの子犬を見た時のようなテンションで「カワイイー!」と言える魔物なのである。むしろ相手に対して優越感を持っていればいるほど声のトーンが上がり、目が輝きだすのだ。
優越感のところがポイントです。さらにこの対比がこの後に続きます。
しかしそれは女なら必要とされる社会性の一つであり、他人の赤ん坊を「皮っぽいですね」などと評さないのと同じ道理である。
『#92 三十路』
年代別に自身をこう評しています。
つまり私は「視界に入らない10代」「抱けない20代」から、「絶対勃たない30代」という順調な年の重ね方をしていると言えるので、そんなに悲観することでもないのかもしれない。
悲観することでもないという立場が『負ける技術』といった感じです。
『#99 BLとはなにか』
BLを読んでストレスを発散しいときの話が書かれています。
つまりキャラが豪雨の中、全裸で十字架にはりつけられているようなシーンが出てこようとも、「よっ待ってました!」とおひねりをケツに挟んでやることができるのである。
そんな漫画は読んだことはないそうですが、この発想はぶっ飛んでいます。
『#118 合コンの招待』
コラムの後に一枚絵とコメントがあります。この一枚絵のコメントではこのように書かれています。
一年一緒のクラスの男子ともまともに話せなかった女がなぜ合コンで初対面の男と仲良くなれると思うのか
辛辣です。
さいごに
以上のような話がたくさんあります。すべてがテンション高い面白いコラムではありませんが、立場を踏まえて読むと笑う以外にも共感するところが見つかると思います。
『#125 負けるということ』
負けることについて以下のように書いています。
「俺の人生良くて30点」と割り切ってしまったほうが良い。絶望が一転希望に変わることはまれだが、希望が一瞬で絶望に変わることはままる。ならば最初から、「ちょっと絶望」ぐらいの位置にいたほうが気が楽ではないか。
言い得て妙というか、変に苦労とストレスを抱えるならこれくらいがちょうどいいような気がします。身の丈に合った生活とはよく言ったものです。その結果、結婚して家を建てているわけですから、著者は負ける技術を駆使した勝ち組といえるかもしれません。
題名は続編のようで、内容はあまり関係ない本として『もっと負ける技術』があります。
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