市橋達也 『逮捕されるまで 空白の2年7ヵ月の記録』、幻冬舎(幻冬舎文庫電子書籍版)、2013年発行を読みました。
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あの犯罪者は空白期間に何をしていたかを本人が書いている点に面白さはありますが、中身は淡々としており面白いところはありません。
日記の延長線
~~をした。と繰り返される文章です。著者がどう逃げたかがほとんどで、その時に何を考えて行動したかというのはほとんどありません。
身近な何かが関連して行動を決めてはいるのですが、だからなんなんだという具合です。特段盛り上がるような固い意志があるわけではなく、なんとなくそれで決めている感があります。そのため、よほど興味が無い限り退屈に感じると思います。
ちょっとした無人島サバイバルや土方体験記として得るものはあるかもしれません。
著者の内面
時折語られる心情から著者がどのような人物かを考察するのは楽しいかも知れません。しかしながら、良い人間ではないようで、あまりいい感じはありません。
伝わってくるのは図太さ、無神経さ、他人への無関心、高い自尊心と自己愛だからです。
怖くなって逃げ出して、でもやってもないことでさらし者になるのは耐えられずに最後は捕まります。途中で悔恨の言葉は出てきますが、感情のこもっていない空虚な感じがするだけでした。
その一方で「!」が出るほど強い言葉が出てくるシーンもあります。そこで高い自尊心と自己愛が強い人なんだと感じました。
さいごに
あの事件と著者に関心があれば、それなりに知的好奇心は満足すると思います。言葉に出すと「へー」とか「ふーん」とかそういう感じです。
本書は題名通り、逮捕されるまでが書かれています。逃亡するきっかけとなった動機も心情もまるで分かりません。それらがないので悔恨の言葉はうわべだけに聞こえます。
読み終えて思ったのは、「僕は性的倒錯者じゃない」ということを言いたかっただけなのかなということです。
著者は自己愛の強く、他人への感情が欠落気味の残念な人なのでしょう。
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